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主な研究テーマ

時空間的統計情報の学習・利用メカニズムの解明

私たちの周囲には多くの情報があります。その中から必要な情報を探して選び出すことは、とても簡単なことのように思えます。例えば、机の上からペンとノートを探すことを想像してください(机が散らかっていてペンとノートを探すのも大変な場合は、また別の話です)。あるいは、スマートフォンのアプリのアイコンを探すことを想像してもいいでしょう。

日常的に、あたりまえにおこなっていることにも関わらず、このような探索には様々な認知メカニズムが関与しています。私たちの眼は非常に高機能ですが、一方で、高解像度の情報を得られる領域は狭く、視野の一部しか詳細に処理することはできません。そのため、高解像度の情報を得ることができる視野の中心領域を、眼球を動かして移動させていく必要があります。さらに、視野の一部しか高解像度情報が得られないといっても、その情報量は莫大です。その中から必要な情報を選び取るシステムが必要です。このような選択システムを視覚的注意と呼びます。

私は、この視覚的注意が周囲の環境に応じて柔軟に変化していく過程を研究しています。私たちは常に莫大な視覚情報を取り入れていること・それらの視覚情報は刻一刻と変化していることは事実です。一方で、これらの情報は無意味に並んでいるわけでも、ランダムに変化しているわけでもありません。視覚環境には一定の規則性があります。この視覚環境に存在する規則性を学習し利用するメカニズムが視覚的注意による選択をどのように変化させるのか・視覚的注意が規則性の学習・利用メカニズムにどのように影響を持つのか、を明らかにすることが、私の研究テーマです。

主な研究手法

研究には、主に行動実験を用いています。外から観察するだけでは、視覚的注意の働きを取り出すことはできません。精緻な実験操作を用いて目に見えないこころの働きをあぶり出すことで、視覚的注意メカニズムに迫ることができます。

また、実験から得られたデータの生成過程を確率モデルとして表現する認知モデリングを用いて、データに反映される情報処理過程を数理的に示す試みもおこなっています。

業績・発表予定

論文

発表予定

  • Kobayashi, H., Muto, H., Shimizu, H., & Ogawa, H. (2021). Effects of interstimulus spacing on flanker interference investigated by hierarchical diffusion modeling. The 18th Annual Convention of the Japanese Society for Cognitive Psychology, Kanazawa Institute of Technology, March 3-4.

学会発表

  • 小林 穂波・小川 洋和 (2020). Investigating visual attention with statistical modeling: The time course of contextual cueing effect  日本基礎心理学会第39回大会 オンライン若手セッション, 北海道大学 (web開催), 11月7日-11月17日.

  • 小林 穂波 (2020). 文脈手がかりは視覚探索の初期段階を促進する──SAT課題と統計モデリングを用いた検討──  公募シンポジウム「心理学の諸領域におけるベイズ統計モデリングの実践」, 東洋大学(Web開催), 9月8日-11月2日.(企画:武藤 拓之,難波 修史,司会:武藤 拓之,話題提供:小林 穂波,難波 修史,水野 景子,横山 仁史,松井 大,指定討論:小杉 考司)

  • Kobayashi, H., & Ogawa, H. (2020/06/19). An early locus of contextual cueing: An investigation with the speed-accuracy tradeoff task. Paper presented at Vision Sciences Society (virtual meeting).

  • 小林穂波・小川洋和 (2019/12/1). 文脈手がかりは視覚探索処理の初期段階を促進する. 日本基礎心理学会第38回大会, 神戸大学(兵庫県神戸市)

  • 小林穂波・小川洋和 (2019/11/10).読み方向のプライミングが単語の並列処理を促進する.関西心理学会第131回大会,大阪教育大学 天王寺キャンパス(大阪府大阪市)

  • Kobayashi, H., Muto, H., Shimizu, H., & Ogawa, H. (2019/11/14). A Bayesian hierarchical diffusion model of flanker interference. Paper presented at the Object Perception, Attention, & Memory (OPAM), Montreal, Canada.

  • Kobayashi, H., & Ogawa, H. (2019/7/31). Reading direction influences the deployment of visual attention during word processing. Paper presented at Asia-Pacific Conference on Vision 2019, Osaka, Japan.

  • 小林穂波・小川洋和 (2019/5/26).自己観の変化が視覚的注意のスポットライトの大きさを調節する.日本認知心理学会第17回大会,京都テルサ(京都府京都市).

研究会発表

  • 小林穂波・小川洋和(2019/3/3).自己に関する概念の変化が視覚的注意の焦点の範囲を調節する.日本心理学会「注意と認知」研究会 第17回合宿研究会.

受賞

  • 日本基礎心理学会第38回大会 優秀発表賞 (発表タイトル: 文脈手がかりは視覚探索処理の初期段階を促進する)

  • 関西心理学会第131回大会 関西心理学会研究奨励賞 (発表タイトル: 読み方向のプライミングが単語の並列処理を促進する)